米国Morningstar2年に一度の投信投資家環境レポート3/3

投信販売

前回は「B-」で平均並みだったが、今回は「平均以上」にグレードが上がった。多くの金融機関で系列運用会社以外の投信も幅広く取り扱っており、証券、銀行、保険、インターネット証券、そしてロボットアドバイザーを併用した取次ぎチャネルなど、投資家にとって多様な販売チャネルの選択肢がある点が評価された。日本籍投信だけでなく、外国籍投信も比較的手軽に同程度の手数料で購入できることも好評価であった。ただし、外国籍投信の情報開示が日本籍投信と同レベル、同形式ではない点で一般投資家に広く勧めるべきではないことが前項で指摘されている。

 ファンドの最小購入単位が1万円からと、グローバルにみて小額から投資できることも日本の良い点だ。すでに1000円から投信が買える金融機関も増加しており、2018年からスタートする「つみたてNISA」への対応によって少額から購入できるチャネルはさらに増加するだろう。また、「おつり投資」「(カードに付随する)ポイント投資」など、勤労世帯や投資未経験者にとってわざわざ資金を用意しなくても購入できるサービスを提供するところも出現し、投信購入に負担を感じさせない買い方の提案として興味深い取り組みだ。

 日本では義務付けられている目論見書の事前交付・閲覧は、(前述のDCなど特殊な例を除き)広く守られている。顧客本位の「原則」に明示された“アドバイザー(販売員を含む)が利益相反事項を開示するべきである”“他の同種の商品の存在も告げるべきである”ことなども、好評価された。この点についは実際には、各金融機関の本部の意識によって販売現場の状況はまだ様々である。少なくとも筆者は大手金融機関などでこの夏以降に投信勧誘をされた際にも、同種の投信を並列して紹介されたことはない。今後「原則」がどのように実践されていくかは、個社の問題であるに止まらず、業界文化の行方を左右する課題だろう。

※本調査の原文(英語)はこちらからダウンロードできます。
評価方法の概要: 以前の調査報告に対するフィードバックや、様々な環境の変化に伴い、今回調査からいくつかの点が変更された。今回から5段階評価としたことは前述の通り。読み手にとって、他の国々と比べてある国がどんな評価を受けたかを、より分かりやすく伝えるための変更である。グレードは5等分ではなく、「平均並み」の国が他のグレードより多く、調査項目によって、グレードごとの国の数にもばらつきがある。各セクションに対するウェート付けは図表の通り。投資家にとって、より
直接重要な「情報開示」と「コスト」を30%、「規制」と「販売」を20%とした(前回は「コスト」と「販売」は各25%、その他は同じ)。設問ごとに投資家にとっての重要性を勘案して評点の配分を決めている。対象としたファンドはMorningstarの分類で株式、債券、アロケーションとした。前回まで対象だったマネーマーケット
は除外した。金利や低リスク商品の動向によって国ごとに違いが大きいためである。