「投資の神様」バフェットの株主総会から、 14歳のわが子に学んでほしい「9つの教訓」
モーニングスター・インデックス ストラテジスト Dan Lefkovitz May 7, 2024
「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイは、5月4日に年次株主総会を開いた。米調査会社モーニングスターのストラテジスト、ダン・レフコヴィッツ氏は、14歳の息子と現地で参加をしたという。今年の総会でのバフェット氏の言動から、息子に学んでほしいと切に思った「人生の教訓」とは何か。
執筆:Morningstar
翻訳校正:FinTech Journal編集部
- ※本記事は、米国モーニングスター社の記事「What I Hope My 14-Year-Old Learned at Berkshire Hathaway’s 2024 Annual Meeting」をもとにFinTech Journal編集部が翻訳・再構成したものです。米国モーニングスターの独占的な権利に属しており、私的利用かつ非営利目的に限定します。
- ※本記事は情報提供のみを目的としており、いかなる投資をも推奨するものではありません。
< 目次 >
- 息子と2年ぶり、2回目のバークシャー年次総会へ
- バフェット氏の一貫した質疑応答の姿勢
- 唯一無二の関係性、亡き「相棒」チャーリー・マンガー氏
- Z世代は失笑、「AI」について問われたバフェット氏の回答
- 説得力しかない、「読書」に対するマンガー氏の言葉
- 他がためらうときに、バフェット氏が貪欲に選択できるワケ
- バフェット氏が「投資の大半を米国にとどめる」真意
息子と2年ぶり、2回目のバークシャー年次総会へ
2年前、私はバークシャー・ハサウェイの年次総会に息子のアイザックを連れて行き、そのことをMorningstar.comに寄稿した。うれしい反響をいただいたが、そのほとんどが「うわー」というものだった。
また、ソーシャルメディアでは、「ディズニーランドの代わりに株主総会に子供を連れて行くなんて、なんて偏屈な父親なんだろう!」というような批判を受けた。もっともな反応だ。
正直に言うが、14歳のアイザックをネブラスカ州オマハに再び連れて行ったのは、私の発案ではなかった。私たちの2022年の旅は、パンデミックのせいで予定が狂ってしまった春休みを埋め合わせるためのリベンジ旅行でもあった。
今年は忙しい時期に年次総会が開催されたこともあり、シカゴのラッシュアワー渋滞やアイオワのどこまでも続くトウモロコシ畑、大草原の稲妻の嵐の中を8時間ドライブして行くことに乗り気だったわけではない。
どうしても行きたいと言ったのはアイザックだった。彼は2022年総会でちょっとしたバークシャーファンになり、チャーリー・マンガー氏が亡くなったことで何がどう変わるのかを知りたがった。彼はまた、ウォーレン・バフェット氏をとても面白い人だと思っている。
バークシャーの総会は私にとって、バリュー投資と同じくらいの価値観のものだ。CHIヘルスセンターで開催された「資本家のためのウッドストック」に参加した3万人以上の中で、未成年者がアイザックだけではなかったことは確かだ。アイザックは母親からの「どうだった?」「何を学んだの?」という質問に、予想どおり「良かったよ」「いろいろ」と答えた。
今年の総会から、私がアイザックに吸収してほしいと願う美徳をいくつか挙げてみよう。
バフェット氏の一貫した質疑応答の姿勢
- 思いやり
ネバダ州のある環境正義団体の代表が、公共料金や再生可能エネルギー投資について難しい質問をしたとき、バフェット氏の回答は思慮深く丁寧だった。
何をどのように質問されても、バフェット氏は敬意をもって対応する。「思いやりは無料だ」と彼は言い、「金持ちになったからといって世界が良くなるわけではない」と指摘する。
バフェット氏は「The Giving Pledge(寄付の誓い)」に署名し、自らの財産の99%を慈善活動に寄付することを約束している。思いやりはバークシャーのビジネスモデルにとっても不可欠なものだ。オーナーたちがバークシャーに売りたがるのは、良い待遇を受けられることを知っているからだ。
アイザックにこの点を強調すると、14歳の典型的な答えが返ってきた。「うん、思いやりが大事なのは知ってるよ、パパ」。それならOKだ。
唯一無二の関係性、亡き「相棒」チャーリー・マンガー氏
- 友情
後継者であるグレッグ・エイベル氏にある質問をしたとき、バフェット氏は間違って「チャーリー?」と言った。会場はエイベル氏も含め、温かい笑いと拍手でいっぱいになった。
恒例のオープニングムービーはチャーリー・マンガー氏の人生と彼が後世に遺(のこ)したものにささげられ、「補償コンサルタントを雇うくらいなら、シャツの下に毒蛇を投げ込んだほうがましだ」といった彼の最も印象的な名言が紹介され、バフェット氏は彼をバークシャーの「立役者」だとたたえた。
マンガー氏との友情がいかにバフェット氏の人生を豊かにし、2人のパートナーシップがいかにバークシャーを豊かにしたかは明らかだ。
アイザックは、バークシャーの子会社であるジャズウェアーズが手がけるウォーレンとチャーリーのスクイッシュマロ(ぬいぐるみ)が売り切れていたことにがっかりしていた(もちろん、弟妹へのおみやげだ)。
- 感謝
バフェット氏は、自分の好きなことを見つけ、一緒に働く仲間に恵まれるという「生まれながらの宝くじ」に当たったことの幸運を繰り返し強調した。
彼は総会の間ずっと、他者への感謝を表していた。バフェット氏は、彼とマンガー氏が長生きできたのは運が良かったからだとしているが、気質も影響しているのだろう。ちなみに、チャーリーは1日も運動しなかったし、食事にも気をつけなかったのに対して、バフェット氏はシーズのキャンディとコーラを常食として生きているようだ。
「国の借金について心配しているか」という質問に対し、バフェット氏は「私は心配性ではない」と答えた。とはいえ、彼は「それについて考え」、懸念を表明している。
Z世代は失笑、「AI」について問われたバフェット氏の回答
- 謙虚さ
バフェット氏は、米メディア大手パラマウントへの投資の失敗に対し、個人として責任を取った。彼はAIに関するいくつかの質問に答え、AIについては、変革を起こす可能性がありディープフェイク詐欺を生みがちであること以外、何も知らないことを認めた。
バフェット氏はアップルの大株主の1人だが、彼はテクノロジーに対する自分の理解について、「iPhoneの中には小さなヒトがいるのかもしれない」と冗談を言った(デジタルネイティブ世代である14歳のアイザックは失笑していた)。
バフェット氏は、「自分は何かモノがあればそれが機能するかどうかを知りたい人間であり、マンガー氏はそれがどのように機能するかを知りたがる人間だった」と言い表した。
限界を理解し、認めること。ただし、代数学が自分の「理解の範囲」外だからといって宿題をサボることはできないよ、アイザック。
説得力しかない、「読書」に対するマンガー氏の言葉
- 読書
「もし今、少額の資金で投資を始めるとしたら」という質問に対してバフェット氏は、「2万ページもの株式情報を読みあさって投資機会を見極める」と答えた。
彼はベンジャミン・グレアム氏の「The Intelligent Investor(賢明な投資家)」を少なくとも5回は読んでいる。マンガー氏はかつてこう言った。
「私は人生を通して、読書をしていない賢者に会ったことがない。1人もいない。ゼロだ。ウォーレンがどれだけ読書しているか、そして私がどれだけ読書しているかを知ったらあなたは驚くだろう。私の子供たちは私のことを笑う。彼らは私のことを、本から足が2本出ているようなものだと思っているよ」
この言葉をポケットに忍ばせておこうと思う。今度アイザックがPlayStationで長時間遊んでいるのを見つけたときのために。
他がためらうときに、バフェット氏が貪欲に選択できるワケ
- 保障
ある質問者は、「第1四半期に過去最高の1,890億ドルに膨れ上がったキャッシュの山を、なぜバークシャーは使わないのか」と尋ねた。バフェット氏は2008年のバークシャーの株主書簡でこう書いている。
「私たちは明日の義務を果たすために見知らぬ人の親切を当てにしたくありません。選択を迫られたとき、私は一晩の睡眠さえも余剰利益のチャンスと引き換えにはしません」
バフェット氏は現在のキャッシュについて、魅力的な投資機会があまりに少ないためだと説明した。流動性を維持することでバークシャーは「他が恐れているときに貪欲になる」ことができ、「自分たちだけが前向きに行動できる偶発的な好機」を生かすことができる。
- 継承計画
アップルのティム・クックCEOも総会に出席し、企業のバトンタッチの成功例として紹介された。レガシーの構築には継続性の確保が不可欠だ。
バークシャーの将来のリーダーであるグレッグ・エイベル氏とアジット・ジャイン氏は、ユーモアと庶民的な知恵に欠けているものの、知性と誠実さでそれを補っている。
バークシャーの事業である、鉄道事業のBNSF(バーリントン・ノーザン・サンタフェ)、エネルギー事業のBHE(バークシャー・ハサウェイ・エナジー)、そして保険事業のGEICO(ガイコ)に関する彼らのコメントは洞察に富んでいた。エイベル氏はバークシャーの企業文化を巧みに要約してみせた。
「私たちは株主をパートナーとして、経営陣をオーナーとして扱います」
「エイベル氏とジャイン氏の話を聞くために8時間もドライブするのは気が進まないかもしれない」とアイザックは言ったが、彼は自分が受け継ぐことになるバークシャー投資を売却するつもりはない。私の継承計画は進行中だ。
バフェット氏が「投資の大半を米国にとどめる」真意
- グローバルシチズンシップ(注)
編集注:「グローバルシチズンシップ」は「地球市民意識」などと訳され、国際社会の一員としての責任と共生意識を持つことを意味する。2012年9月に国連事務総長が開始したGEFI(グローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアティブ)で、3つの優先分野の1つに挙げられたことで広がった概念。
総会の最初の質問者は香港から来た人で、「バークシャーは中国投資を増やすのか」と尋ねた。ドイツから来た人もいた。ニュージーランドから来た若者もいれば、マレーシアから来た若者もいた。
ある情熱的なカナダ人はバフェット氏に「国境北側への資本配分を増やすつもりがあるか」を問い、あるインド人は自国市場の長所を高く評価した。
バフェット氏は、「バークシャーは投資の大半を国内にとどめるつもりだ」と語った。ただし、彼は世界市場の大部分も注視しており、バークシャーが保有する日本の株式についても繰り返し言及し、同社は今後も米国拠点企業を通じて世界経済に参加すると説明した。
米国の真ん中にいても、アイザックと私には世界とのつながりの重要性が感じられた。
- 愛国心
バフェット氏は米国で生まれた幸運を繰り返し強調した。パンデミック期の2020年株主書簡で彼はこう述べている。
「232年という短い歴史の中で……米国ほど人間の潜在能力を開花させるインキュベーターはなかった……決して米国の負けに賭けてはならない」
今年の総会でバフェット氏は、50億ドルを超えるバークシャーの徴税令状を誇りの記章として身につけ、税金逃れを追求する他社を非難した。
彼はかつて「米国の企業や個人が『単独で成し遂げた』と自慢するのは傲慢(ごうまん)にもほどがある」と書き、バークシャーの成功の多くは「米国の追い風」によるものだと認めている。愛国心はバークシャーにとって良いビジネスでもある。
「私たちは米国政府から、負債や懇願者ではなく資産であると思われたい」とバフェット氏は言い、バークシャーが有利な条件で流動性を提供できる状況をほのめかした。
アイザックと私は帰りの車の中で、家族代々この国で享受してきた機会に思いをはせた。米国の問題がクローズアップされるであろう対立的な選挙の年にあって、この国が持つ多くの長所も忘れられるべきではない。
「ご来場ありがとうございました。来年もまた来てくださることを願っています」。バフェット氏は閉会時にあいさつし、最後にこう言った。「私も来年また来たいと思っています」。
アイザックも私も、あなたが来てくださることを願っています、バフェットさん。