2024年4月末 ランキングコラム

「JITRIランキング」2024年4月末 

 

○ 新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが販売会社または投資家にあるのかがわかります。

4月の新ファンドで770億円とスタート時にもっとも資金を集めたのはフィデリティ投信の「フィデリティ・新興国中小型成長株投信《エマージング・ハンター》」。近年は米国株式など先進国株式のリターンが好調であったため、新興国株式はインドへの集中投資型以外あまり人気が無かったのですが、中小型成長株という尖ったコンセプトの新興国株式ファンドが投資家の資金を集めました。2番目はアセットマネジメントOneの「みずほサステナブルファンドシリーズ―LO・サーキュラー・エコノミー」が190億円集めました。ファンド名のLOはロンバー・オディエ・アセット・マネジメントの略称で、株式の運用指図を行う運用会社名。また、「みずほサステナブルファンドシリーズ」と銘打っているので、今後、シリーズとしてファンドが設定されることになるのでしょう。

追加型では、設定時は「自己設定」といって運用会社が自己資金で運用をスタートし、その後追加募集期間(一般的にはスタート後いつでも)に投資家の資金が入ってくるものもあります。当初設定時の金額が大きく無いのでランキングでは目立ちませんが、今後大きく育つ可能性もあります。4月はETFが6本スタートしましたが、そのうち5本が米国債券に投資を行うものです。当面は機関投資家が活用することを期待して設定されたものと思われますが、米国債ETFへの投資が個人投資家のポートフォリオの多様化に一役買うといった未来もあるかもしれません。

 

○ 1年間継続して資金純増であった人気ファンドでは、12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。○のついたNISAつみたて投資枠対象ファンドが多数ランク入りしています。◎のインデックス運用のものも資金流入では強いのですが、9位、10位14位、18位、22位とインド株式に投資をするファンドも上位に入っており、その人気ぶりがうかがえます。また、ラップなど一任運用の対象となっているものも継続的に資金が入りやすいためランキングに入っています。

<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。分配金のもととして株式の配当が期待されるため、好配当株式を投資対象とするものが人気を集めています。かつては毎月決算型といえば外国債券、ハイ・イールド(低格付)債券、あるいはオーストラリアドル建ての債券や、外国REITが人気でしたが、昨今は決算回数の多いファンドでも株式が『人気の資産クラス』となっています。

<資産活用型>は3月から1本減少して43本、<資産形成型>は11本増加して265本でした(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。

 

○ 純資産額によるランキングは当然のことですが一朝一夕でランキングがころころ入れ替わるものではありません。<資産形成型>は9位まで前月と順位は変わらずでした。前月13位から10位に「eMAXIS Slim先進国株式」が、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」も15位から1つランクを上げています。その前後をしめているのはファンドラップ向けの投信で、ラップでは資産規模の大きい顧客の資金動向や一任向けの運用方針の変更などが資金の流出入を左右します。一方、低コストのインデックス型投信は、(もちろん市場のトレンドによって投資対象資産クラスの人気/不人気の変化はありますが)比較的コンスタントに資金を集めて資産規模が成長していく可能性が高いとみることもできるでしょう。

 

○ 外国籍投資信託のうち、外貨建てMMFの純資産ランキングと、代行金融機関別(基本的には外国籍投信の販売会社)純資産ランキングもご参考ください。外国籍投信として取り扱いのある外貨建てMMFは現在16本、そのうち9本が米ドルですが、カナダドルが2本あるのみで、そのほかは豪ドル、ニュージーランドドル、南アフリカランド、英国ポンド、トルコリラと1本ずつです。この外貨建てMMF全体の純資産額は2兆6000億円、これを含む外国籍投資信託の純資産額が8兆6000億円です。

日本籍の公募投信では1本で1兆円を超える追加型株式投信(ETFを除く)が9本ありますが、外国籍投信全体の8兆円はさて、多いのか少ないのか。かつては日本籍投信では規制上可能ではなかった運用を外国籍投信としてヘッジファンドなどを提供する、分配金のもと(原資)についてのルールの違いを利用して毎月決算型を提供するといったこともあったのですが、現在では国内投信でも運用規制の緩和が進み実に様々な運用が可能になっています。また、外国籍投信は日本籍投信に比べて直接運用者からの情報が入手しにくい、ファンドの情報開示がわかりにくい、代行金融機関によって開示の充実度がまちまち、といった問題もあります。さらに基本的なこととして実際に購入している投資家が、自身が保有している投信の国籍(日本籍か外国籍か)を知らないケースも多々見受けます。外国籍投資信託を設定する必然性について、よく考えてみるべき時期が来ているようにも思います。

 

(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えや感想です。Morningstar Japanとしての見解ではありません。)