2024年7月末 ランキング&コラム

○ 今月のランキングは以下の内容です。

2024年7月末時点の様々なランキングやデータをご紹介します。

 

 

「世界のマーケット」  / NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績  / 「5年間継続して資金純増の人気ファンド」  / 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」  / 純資産500億円以上の人気ファンドランキング  / 「新規設定投信 設定額ランキング」  / 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」  / 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」

 

ランキングは以下になります。

JITRIランキング_2024年7月末

 

 

― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型指数)、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。

 

 

― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の7月末時点でのリスクやリターンなど運用実績。資産形成のために投資信託への投資を活用しようという場合、一般的には検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しています。

 

 

― 「5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。7月は3本増えて109本ありました。このうちアクティブ投信はわずか15本、つみたて投資など資産形成の場ではパッシブ化が非常に進んでいます。一方で、15本のアクティブ投信はなぜここに入ることができたのでしょうか。NISAつみたて投資枠の対象ファンドや、確定拠出年金など、そもそも「つみたて投資」で活用されているファンドが多いことがわかります。安定した資金純流入は地味でもコツコツ投資を続ける投資家に支えられています。つまり資金動向が安定している「質のよいファンド」を作る責任は運用会社だけではなく、投信の販売手法や、投資家が投資に取り組む姿勢など、販売会社や投資家の側にもあるということです。次々にファンドを作っては流行とともに使い捨てにしていくとすれば、それは資金フローから見てファンドの「質」が落ちていくだけでなく、運用会社、販売会社、投資家のすべてにとって、消耗戦になるということです。

 

 

― 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。

「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」では、トップに全世界株式、2位と4位に米国株式S&P500等のインデックス投信が並んでいます。3位、7位はインド株式に投資をするもの、6位、11位は半導体株式に投資をするものでした。パッシブ運用の投信が隆盛を誇る中でも、特定の新興国やテーマ型の投資を「サテライト運用」と称してポートフォリオに付け加える潮流もあるようです。ただ一般的にはこうした特定国や特定テーマへの投資では、投資家は相場の後追いになる傾向があります。テーマそのものは有望な分野で、ファンドのリターンもとても良い場合でも、投資家の投資タイミングがその素晴らしいリターンをしっかり享受できるとは限りません。目覚ましい成長分野に対しても短期の視線で投資タイミングをはかることは、かえってタイミングを外してしまうリスクを「あえて冒す」行動になるかもしれません。

 

 

<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。こちらは好配当株などを中心にアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、パッシブ投信は51本中わずか4本でした。アクティブ投信では3年以上続けて資金純流入の投信が5本、5年以上となると2本のみです。金利動向、利回りなどの市場環境に応じて投資対象の選好が変化するためでしょうか、これも資産活用型投信を買う投資家の特徴と言えるかもしれません。

<資産活用型>は6月から3本増加して51本、<資産形成型>は314本で本数は変わらずでした(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。

 

 

― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は389本から377本に減少、<資産活用型>も104本から100本に減少しました。ETFを除く全株式投信追加型5388本、純資産合計額127兆6654億円に対して、500億円以上のファンドは合計で477本、純資産93兆8393億円ですから、本数でわずか9%弱の投信が純資産で70%以上を占めています。1兆円以上のファンドは<資産形成型>7本<資産活用型>2本の全9本で、うちアクティブ投信が5本と過半を占めています。

純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、一度は5兆円を突破しましたが7月末には4兆9800億円でした。

 

 

― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。

7月の新ファンドは20本。6月と比べて4本増え、当初設定額の合計は290億円から575億円に増加しました。投信販売は新ファンド中心から定番ファンド推奨へと変化していますが、新ファンドはやはりトレンドを映す鏡です。

7月に最も資金を集めたのはあおぞら投信の「ぜんぞう」シリーズで220億円、3位にも同じあおぞら投信の「ぜんぞうプラス」が68億円で並んでいます。2位はSBI岡三アセットの「アジア半導体関連フォーカスファンド」が147億円、9位は「eMAXIS 日経半導体株インデックス」3億円、10位は日興アセットの「上場インデックスファンド日経半導体株」、13位は「MAXIS日経半導体株上場投信」と半導体株関連のファンドが4本ありました。そのうち3本は同じ日経半導体株指数に連動をめざす日本株のパッシブファンドとETFでした。ほかにもグローバルXが「AI&ビッグデータ」と「ウラニウムビジネス」という特化型のETFをスタートしました。まさに投資トレンド向け商品が百花繚乱という月になりました。7月も書きましたが、テーマ投資においてもパッシブ(インデックス)投資が選択肢となりつつあります。

 

 

― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は6月末時点で80本、純資産額合計は7218億円ですが上位20本で全体の純資産の70%を占めます。純資産1000億円以上の投信は2本、3位の投信の純資産は840億円で500億円以上の投信はここまでです。単位型は対面などの営業努力で設定日までに投資家の資金を集める必要があるため、当初設定時に数百億円を獲得することはあっても、現在ではなかなか販売が難しい商品になりつつあるようです。

 

 

― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:多くの方にとってはちょっと疎遠な、当局に届け出をして日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。外国籍投信は個人投資家が「たまたま目にして購入する」ということはあまりなさそうで、単位型投信同様に金融機関による案内や、一度購入した投資家が関心を持って外国籍投信をフォローするようになる、といったケースが多いようです。とはいえ、比較的高い年齢層の特に富裕層では、いずれにせよ投資信託は「案内されて買うもの」という文化はまだ続いており、実際には国内籍の投信か外国籍の投信かといった区別を強く意識していないお客様も多いようです。

外国籍投信は6月末時点で646本(国内純資産「0百万円」を含む)、合計純資産額は9兆1162億円でした。純資産100億円以上の投信が106本、その合計純資産額は5兆3241億円ほどで全体の約6割を占めます。大手証券を中心に富裕層ビジネスの一環として外国籍投信は引き続き一定の需要があるようで、時に「隠れたベストセラー」を生むこともあります。ただ、公募追加型投信のように、多くの評価機関が目を光らせ個人投資家がweb上で比較的手軽に情報収集をできる環境が整っている、というわけではありません。コスト水準や商品のわかりやすさ、情報開示の透明性などが日本籍投信並みではないことは注意が必要です。とはいえ、そもそもインターネットで情報収集をする投資家とは別の顧客セグメントが主要な対象となっているのかもしれません。

 

 

― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)別の純資産額合計によるランキングも紹介しています。

 

 

(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えや感想です。Morningstar Japanとしての見解ではありません。)