2024年9月末 ランキング&コラム
「JITRIランキング」2024年9月末
○ 今月のランキングは以下の内容です。(※ランキングデータはこちらをご覧ください)
― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型指数)、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)の状況もあります。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。
― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の9月末時点でのリスクやリターンなど運用実績。資産形成のために投資信託への投資を活用しようという場合、一般的には検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しています。
― 「5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。7月の109本から8月は84本に激減、9月も大きく改善されることなく87本にとどまりました。このうちアクティブ投信は13本で変わらずです。一度資金純流出をしてしまうとこのランキングに戻るには最低でも5年かかりますから、ここに入るのは本当に大変なことです。
― 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。
<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。
米国株式市場を代表するS&P500種指数や世界の株式市場を代表する指数などに連動するインデックス運用(◎印)の投資信託と、インド株式や半導体株式など地域・テーマを絞ったいわゆるテーマ型の投信です。
インデックス運用の投信は、大きく分けると二つの正反対の利用者の投資目的があります。第一に、こちらが主流であると思いますが、つみたて投資やスポット買いで資産形成を図るバイ・アンド・ホールドタイプの人々。第二に、指数の動きを見ながらタイミングを計って短期で売買をする人々です。ただし、当ランキングにあるように継続的に資金が積みあがっているということは、つみたて投資やリピート購入で活用する方がファンドを育てているという証拠でしょう。
テーマ型投資については、その分かりやすさや心を引く魅力で購入意欲を持つ投資家層があることは確かです。そうした投資を個別に個人投資家が行おうとしても難しいため、投資信託は手軽に投資ができる便利な道具でもあり、こうしたファンドが生まれてくることも投信の面白さのひとつであると思います。ただ、テーマ型の投資は、ファンドそのものの問題ではなく、市場が過熱気味のときに資金が大きく流入する傾向があり、結果として投資家は高値で買ってしまうというケースが過去には多々見られました。市場に逆風が吹いたとき、こうした投資とどう向き合うかも考えたうえで投資に取り組む姿勢が求められます。
<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。こちらはアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、資産活用型投信では相変わらず分配金の水準が投信を選ぶ基準となっているようです。とはいえひと昔前のように難解な仕組みで分配金額を上乗せするような商品は影を潜め、現在では好配当株などを中心に比較的スタンダードな投資対象と幅広い投資ユニバースからの銘柄選定の投資信託が多くなっています。
<資産活用型>は49本から47本に減少、<資産形成型>は319本から323本に増加しました(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。
― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は376本から381本に増加、5000億円以上のファンドが25本ありました。純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は5兆1700億円となり、日本の純資産記録更新が迫っています。<資産活用型>は100本で変わらず、5000億円以上のファンドは6本でした。決算回数の多い投資信託ではいわゆる「売れ筋」のファンドがごく少数に絞り込まれているようです。
― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。
9月の新ファンドは34本、当初設定額の合計は8月の350億円から1378億円と大きく増加しました。投信販売は新ファンド中心から定番ファンド推奨へと変化していますが、新ファンドはやはりトレンドを映す鏡です。
9月にもっとも新規資金を集めたのは野村證券専用ファンドの「野村日本新鋭成長株ファンド」で、公募初の非上場株式への投資を含むことをうたったファンドで、当初設定額は477億円でした(6位の「ひふみクロスオバーpro」も非上場株式を含む投資方針です)。2位の「グローバル・オポチュニティ・パートナーズ・ファンド」は311億円、「質の高い成長企業」と思われる10から25銘柄程度への集中投資を行うファンドです。一方、eMAXISシリーズはNeoと銘打ったテーマ型のラインアップの拡充をしています。9月は「AIテクノロジー」が設定されました。三井住友トラストは国内REITと日本株でアクティブETFを設定。フィデリティは1963年に設定され、かつてピーター・リンチも運用していた同社の旗艦ファンドである「マゼラン・ファンド」の日本版「フィデリティ・マゼラン・⽶国成⻑株ファンド」を設定しました。
新規投信の数が34本と多かった理由は、岡三証券のファンドラップ向けにUBSアセットが11本の専用投信を設定したことでした。
― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は9月末時点で79本、純資産額合計は前月の6279億円から7496億円に増加しました。
― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。国内投信と違って、目論見書や月次報告書をインターネット上で見つけるのにも苦労する場合もあり、まだまだ身近な商品にはなりそうにありません。実際には円換算をして支払われる分配金額も、円建ての額についての公開された開示はない、といった状況もあります。外国籍投資信託については、もっと共通のわかりやすい情報開示と、その情報へのアクセスのしやすさを目指して運用、販売を進めてほしいです。
― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関別の純資産額合計によるランキング(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)も紹介しています。外貨建てMMFは、コストを含めてもっと議論が進み、活用しやすいものになれば便利な商品になると思います。