2024年6月末 ランキングコラム

「JITRIランキング」2024年6月末 

 

○ 今月のランキングは以下の内容です。

 

― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型指数)、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。

 

― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の6月末時点でのリスクやリターンなど運用実績。資産形成において投資信託への投資を活用しようという場合、一般的には検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しております。

 

― 「5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。6月は106本ありました。このうちアクティブ投信はわずか15本、いかにつみたて等ではパッシブ化が進んでいるかがわかります。

 

― 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。

「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」では、トップの全世界株式、2位3位の米国株式S&P500等のインデックス投信が並んでいます。一方で4位5位はインド株式に投資をするもの、6位7位は半導体株式に投資をするものでした。パッシブ運用の投信が隆盛を誇る中でも、特定の新興国やテーマ型の投資を「サテライト運用」と称してポートフォリオに付け加える潮流もあるようです。6月1か月の純流入額をみると、インド株式や半導体株などの投信がいかに注目されているかがわかるでしょう。

<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。こちらは好配当株などを中心にアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、パッシブ投信は48本中わずか4本でした。2年以上続けて資金純流入の投信が5本、5年以上となると2本のみです。金利動向、利回りなどの市場環境に応じて投資対象の選好が変化するためでしょうか、これも資産活用型投信を買う投資家の特徴と言えるかもしれません。

<資産活用型>は5月から2本増加して48本、<資産形成型>は294本から314本に増加しました(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。

 

― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は375本から389本に増加、<資産活用型>も101本から104本に増加しました。ETFを除く全株式投信追加型5401本、純資産合計額131兆3192億円に対して、500億円以上のファンドは合計で493本、純資産97兆5755億円ですから、本数でわずか9%の投信が純資産で74%を占めています。1兆円以上のファンドは<資産形成型>7本<資産活用型>2本の全9本で、うちアクティブ投信が5本と過半を占めています。

純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」はついに5兆1000億円に達し、来月か再来月には日本の投信市場最大の記録(同じ三菱UAMのグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)の約5兆8000億円)を塗り替えることになりそうです。

 

― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。

6月の新ファンドは16本。5月と比べて1本減り、当初設定額の合計も560億円から290億円とかなり少なくなりました。投信販売は新ファンド中心から定番ファンドへと変化しており、時折非常に大きな新規投信が生まれるものの、いわゆる新ファンド中心の「回転売買」は下火になったようです。

トップは先月に続き三井住友DSアセットの投信で、「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」で販売会社はSMBC日興証券、当初設定額は122億円でした。ボトムアップ・アプローチと先行指標等様々な分析を用いて30銘柄程度に厳選投資を行う日本株投信です。ハイ・コンビクションとは確信度が高いということで、海外ではファンド名の中に近年時々みかける言葉です。日本の運用会社が海外で販売しているファンドでもファンド名にこの言葉が使われているものもあります。

2位は57億円を集めた「いちよし・グローバル好配当戦略ファンド(年6回決算型)《ミズナラ》」でファンド名からもわかる通りいちよし証券専用の投資信託です。東京海上アセットマネジメントが設定し、インカム(配当収益)に注目して「世界の株式とREIT(不動産投資信託)」に投資をする資産複合型のファンド・オブ・ファンズです。

そのほかなかなか説明もその説明を理解することも難しそうな仕組債などに投資をする投信がある一方で、インドやベトナム、半導体、全世界株式、世界の高配当株や大型成長株などへの投資を行うインデックス投資信託も目を引きます。テーマ投資においてもパッシブ(インデックス)投資が選択肢となりつつあります。

 

― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は6月末時点で83本、純資産額合計は6382億円ですが上位20本で全体の純資産の81%、50本では98%を占めます。純資産1000億円以上の投信は2本、3位の投信の純資産は472億円ですから500億円以上と言っても2本ということになります。販売金融機関の欄は全社ではありませんが、大手証券や都銀のほか、単位型の販売は一部の地方銀行が中心になっているようです。当初募集期間に金融機関からお客様にご案内して販売する、というのが単位型投信の募集スタイルです。

 

― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:多くの方にとってはちょっと疎遠な、当局に届け出をして日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。外国籍投信は個人投資家が「たまたま目にして購入する」ということはあまりなさそうで、金融機関による案内や、一度購入した投資家が関心を持って外国籍投信をフォローするようになる、といったケースが多いようです。とはいえ、比較的高い年齢層の特に富裕層では、いずれにせよ投資信託は「案内されて買うもの」という文化はまだ続いており、実際には国内籍の投信か外国籍の投信かといった区別を強く意識していないお客様も多いようです。

外国籍投信は6月末時点で650本ほどあり(国内純資産「0百万円」を含む)、合計純資産額は9兆3500億円もあります。純資産100億円以上の投信が108本、その合計純資産額は5兆5200億円ほどで全体の約6割を占めます。大手証券を中心に富裕層ビジネスの一環として外国籍投信は引き続き一定の需要があるようです。

さて、何かと話題にのぼることのあるプライベート証券への投資ですが、6月は外国籍投資信託で「米国非上場企業への直接融資(プライベート・デット)および直接出資(プライ

ベート・エクイティ)をともにおこなう非上場プライベート・キャピタル ファンド」を投資対象とする商品が登場しました。当初1口あたり100米ドルで300口(30000米ドル)以上1口単位での購入とのことなので、少し購入単位が大きいものの超富裕層向けというわけでもなさそうです。非上場資産では時価評価や流動性が上場株式などと異なることが特徴です。基準価額は月1回の発表【※原則として投資対象ファンドの純資産価額が海外において公表される日(通常、毎月の評価日から20ニューヨーク営業日後)の5ファンド営業日後の翌国内営業日に公表】で、購入はこの価格で行われます。解約は年4回【(3月、6月、9月、12月)の買戻日の基準価額に基づき、換金(買戻し)請求を受け付ける】に限定されています。ちなみに6月末時点の証券業協会の発表では、国内純資産・基準価額とも「0」となっていました。今後は国内公募投信でもプライベートエクイティなどに投資する商品が設定される潮流があるので、この分野のファンドの情報開示がどのようなものになるか、投資家にどのように説明されるのか等に注目しています。

 

― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)別の純資産額合計によるランキングも紹介しています。

 

 

(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えや感想です。Morningstar Japanとしての見解ではありません。)