<サステナブル投資> 誕生から20年 ESGの足跡と存続している理由
ESGとサステナブル投資について知るべき12の事柄と、今後20年間の展望
Morningstarサステナビリティ エディトリアル・ダイレクター レスリー・ノートン
Morningstarシニア・プロダクト・マネジャー チャリティ・ブルー
投資を続けていると、おそらく「ESG(環境・社会・ガバナンス)」という用語に遭遇したことがあるでしょう。今年で20周年を迎えるESGという概念は、企業や投資の環境・社会・ガバナンスに着目した分析を意味します。ESGは「社会的責任投資(SRI)」と呼ばれる初期のアプローチから進化したものです。場合によっては、ESG分析を含む幅広いアプローチを含む「サステナブル投資」というさらに広範な用語と混同されることもあります。ここでは、ESG誕生に至るまでを詳しく説明します。
地球温暖化が進み、若い消費者や投資家が持続可能性を優先事項とするに伴い、ESGはかつてないほど経済的に重要になっています。それでも、ESGは近年厳しく批判されていますが、消え去ることはありません。我々はモーニングスターのアナリストやその他のサステナブル投資の専門家に、ESG誕生までのいきさつと、今後20年間の展望について質問をしました。
<1: 今年20周年を迎えるESGの誕生に至るまで>
ESGは、厳密にいうと財務的ではないリスクを説明するためのより体系的な方法を人々が模索するにつれて、価値観に基づく投資から進化してきたものです。2004年に国連グローバル・コンパクトが発表した報告書「思いやりのある者が勝利する(Who Cares Wins)」は、「環境、社会、ガバナンス」要因の概念について考察しています。同報告書は、気候変動、それに人権侵害などの非財務リスクを体系的に説明する方法をもたらし、投資は純粋に財務的な観点から行われるべきものであるという見解を否定しました。「多くの場合、例えばですが、責任ある投資家が効果的な公共政策の欠如を補っているのです」とモーニングスター・インデックスのESG戦略責任者トーマス・クーは述べています。
次に、法律事務所のFreshfields Bruckhaus Deringerによって、ESG課題が財務評価に関連し、受託者責任とも矛盾していないことが示され、ESG分析を用いる土台が構築されました。いわゆるフレッシュフィールズ・レポート※として知られる2005年のこの報告書は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の委託によって作成されたものです。受託者はESG課題が重大な場合には考慮する必要があるということを示す多くの研究がありますが、これが最初となりました。(※2005年「環境、社会 とガバナンス問題を機関投資に統合するための法的枠組み」)
2006年には、同じ国連機関が責任投資原則(PRI)を立ち上げ、機関投資家がESGを投資プロセスに組み込むための枠組みを構築しました。
ESGに特化した投資アドバイザーであるFigure 8 Investing Strategies創業者のリサ・クーパー氏は、フレッシュフィールズ・レポートについて、「ターニングポイントでした。同報告書は、投資ファンドに非財務的要因を組み込むことを可能にしただけでなく、財務的なリターンにとって何が重要であるかの時間軸は長く、非財務的要因は投資家にあらゆる種類のリスクと機会をもたらすため、ほぼ間違いなく含めなければならないとしています」と述べています。「欧州の大規模な年金基金はほどなく、銀行や資産運用者にその点を明確にするよう求めたのです」。
<2: 2つの画期的な出来事がESGの成長を促進。社会の意識向上も追い風に>
2015年にはパリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)が署名されました。パリ協定は、現在180カ国以上で批准されており、地球温暖化対策の数値目標を設定しています。
国連のXポスト(2016/9/22): https://x.com/UN/status/778794710634668033
国連も持続可能な開発目標を定め、2030年までに貧困、不平等、気候変動、平和に関する課題に取り組むよう各国に呼びかけています。SDGsには、企業等が目標達成のために実行できる行動が含まれています。これで、ビジネスリーダーと投資家が同じ言葉で話し、共通の目標に向けて取り組むことができる枠組みが設定されました。
NGOフォーラムのXポスト(2024/3/27):https://x.com/ngoforum/status/1772926543540482462
そしてすぐに、「コーポレート・サステナビリティ:マテリアリティ(重要性)に関する第一の証拠」(2016/11/1、The Accounting Review (2016) 91 (6): 1697–1724.)が発表され、財務的に関連性のあるESG要因に焦点を当てることが株主価値にプラスの影響をもたらすことが示されました。例えば、「気候変動が投資家の意思決定に重要な場合、たとえ企業が規制文書に気候変動リスクについて明記しないとしても、重大なリスクとなります」とトーマス・クーは述べています。
かつては投資家が認識していなかった課題が、今では財務的に重要となっています。2008年の世界金融危機は、金融システムの弱点が放置されたままだと、いかに価値が損なわれることになるかを露呈しました。モーニングスター・サステイナリティクスの議決権行使助言サービスを率いるジャッキー・クックは、「投資家は気候変動問題を市場の失敗と位置づけ、パリ協定への推進力となりました」と言っています。
ESG分析を採用するにつれて、投資家は新たなリスクを見出しました。ESG分析によって食品汚染や労働問題などのリスクが強調された工場式農業について考えてみましょう。コロナのパンデミックで、社会の脆弱な部分に大きな影響が及び、企業に世間の注目が集まりました。「食肉処理場の労働者がコロナ禍でも働き続けていたことを思い出してください。突然、人々は“ああ、私たちはESGの課題を目の当たりにしている”と気づきました」と米国サステナブル・責任投資フォーラム(US SIF)の常任理事マリア・レティニ氏は述べています。「食料システムに内在するリスクが経済や商品、食料へのアクセスにどのように影響するかが、COVIDのパンデミックで浮き彫りになりました」。
<3: 企業もESGの重要性が増していると考えている>
パリ協定の目標を達成するための課題への対処に役立つように、G20と金融安定理事会(FSB)は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を設立し、「金融セクターにおける炭素関連資産」への理解を支援しています。TCFDは、世界の多くの地域で規制上の報告要件となるでしょう。2022年までに、G250企業の61%が、このフレームワークの柱の少なくとも一つに沿って情報を開示しました。
2018年、ブラックロックのCEOラリー・フィンク氏は公開書簡で、同僚のCEOに対し、社会における企業の役割に焦点を当てることで長期的な収益性を確保するように求めました。「環境や社会への悪影響を最小限に抑え、良い影響を強調することに注力する企業は、顧客から報われ、ブランドを守り、優秀な人材を惹きつけ、低炭素・デジタル経済への移行をより適切に推進できるだろう」とフィンク氏は記しています。
ブラックロックのXポスト(2018/4/20): https://x.com/BlackRock/status/987039253228961793
これまでは、経済学者ミルトン・フリードマンの株主至上主義が有力でした。しかし、2019年には、財界ロビー団体であるビジネス・ラウンドテーブルも株主至上主義から反転し、顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティといった他のステークホルダーも重要であると述べました。
「企業やそのガバナンスについて、ステークホルダー重視の見方へのシフトは、新型コロナのパンデミックのかなり前からすでに起こっていました。短期主義がもたらすシステミックな脆弱性に対して金融危機後に目覚めたことや、気候変動を阻止するための世界的な行動が緊急性を増したことで促進されました」とサステイナリティクスのクックは言います。「しかしながら、(パンデミックは)株主至上型のガバナンスの根本的な欠陥を浮き彫りにしました。経済的、政治的な影響から、システム全体の回復力を確保する上でステークホルダーの利益が重なり合っているという集団的な認識に火がつきました」。
<4: ESGが主流に>
モーニングスターは、2016年に「ファンド・ETFのサステナビリティ・レーティング」を導入し、モーニングスター・サステナビリティ指数を設定しました。サステナブル投資の著名なコメンテーターで、モーニングスターのサステナビリティ・リサーチの元責任者、ジョン・ヘイル氏は、格付けの構築に貢献しました。ヘイル氏は当時を想起し「格付けの枠組みの複雑さと洗練度といったら信じられないほどです。“こんなことが我々にできるかな?”とモーニングスター創設者ジョー・マンスエトにと尋ねたら、“もちろんだ”とは答えました。ジョーがそう答えると、“よし、ではリソースを何とか繰り回そう”と皆が言いました。レーティングの開始時には、サステナブル投資に焦点が当たり、学術論文も書かれました。モーニングスターは、サステナブル投資というアイデアに太鼓判を押し、多くの人が頷きました」。
MorningstarのXポスト(2016/11/18):https://x.com/MorningstarInc/status/799346674883788800
より多くの大規模投資家がESG分析を利用し始めました。「2014年、私たちは、最も大きな飛躍としてESGを投資に組み込む戦略の活用が報告される傾向に注目しました」とUS SIFのマネジング・ダイレクター、ブライアン・マクガノン氏は言います。「ESGが金融の主流に浸透し始めました」。
ESGによる企業価値向上が明らかになるにつれて、サステナブル投資業界の再編が起きました。イートン・バンスは2016年にカルバート・リサーチ&マネジメントを買収し、続いてインパックスがパックス・ワールド・マネジメントを買収しました。両社とも著名なブティック型のサステナブル運用会社です。2017年、モーニングスターは、ファンドのサステナビリティ格付けにデータを提供するデータ・分析プロバイダーのサステイナリティクスの株式の40%を取得し、2020年に残りの株式を取得し完全子会社化しました。
<5: 多くの金融サービス企業同様、モーニングスターはESGの進化と相互に発展>
モーニングスターのアナリストは、1980年代から、社会的責任投資ファンドのパックス・ワールド、ドレイファス・サード・センチュリー、カルバートといったファンドをカバーしています。サステイナリティクスは、2010年にグローバルなESGリサーチと格付け手法を確立し、2015年にガバナンス・リサーチやカーボン・ソリューションへとサービスを拡充しました。モーニングスターの企業のサステナビリティに対する調査手法は、独立性、マテリアリティ、透明性を主軸としています。「我々には、投資家がポートフォリオの中身についての透明性やより良い意思決定を行うためのツールを得てしかるべきだという理念があります」とモーニングスターの企業サステナビリティのグローバルヘッドであるガブリエル・プレスラーは言います。「ステークホルダーとは、我々の従業員、株主、顧客などを意味し、その誰もが同じ透明性を確保するに値します。ESGについての情報は、ステークホルダーに、発行体や投資家、組織に対するより完全な視点を提供します。市場での価値やそれに伴うリスクだけでなく、市場外に与える影響の良し悪しも明確になります」。
<6: 欧州主導で進化している>
2017年、欧州委員会は、低炭素経済に資本を再び集中させるためのサステナブル・ファイナンス行動計画を発表しました。同計画には、サステナブル投資やサステナビリティ関連リスクについての開示規制に関する提案が含まれています。2019年には、欧州グリーンディールが発足し、それに続いて、企業や投資家が環境に配慮した経済活動を特定できるよう支援する独立した計画や、ファンドマネジャーなどが取引に伴う環境や社会への影響を誤解のないよう伝えることを義務付けるグリーンウォッシング禁止法が策定されました。一連の規制強化によってESGの導入が促進されました。2023年までに、モーニングスターがカバーするESGファンドの資産額は世界で2兆8000億ドルに上り、欧州がその資産の80%以上を占めています。
<7: 透明性と比較可能性は、より強固なものに>
2023年は重要な年となりました。EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が発効され、新しい欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)が最終化され、カリフォルニア州では2つの広範な気候関連開示法が制定されました。2024年、米国証券取引委員会(SEC)は、ついに米国に上場している企業に対して気候変動関連のリスクとそれに適応する計画の報告を義務付ける包括的な規則を採択しました。SECによれば、今日ラッセル1000企業の約90%がすでにこの種のサステナビリティに関するデータを開示しています。他の管轄区域はSECよりもさらに進んでいて、例えば、欧州やカリフォルニアで事業を行っている企業は、SECが要求するよりも詳細な開示を行う準備をしています。(※世界のサステナビリティ報告要件については、モーニングスターの“Sustainability Reporting Requirements”白書をご参照ください)。
<8: それでも……ESGという用語は混乱を招く>
ESG投資という用語が、徐々に、あまりにも多様なアプローチを指すようになってきています。個人の価値観に沿った投資、たとえばESGのインパクトを考慮して株式や企業を選別したり、非財務的要因に基づいて価値を追求したり、あるいはそうした手法を組み合わせたり、といった様相です。ツールとしてのESGは、サステナブルな投資というもっと広範な概念と混同されるようになりました。
適切な理解としては、ESGとは、ESG要因を用いて投資にアプローチする分析のフレームワークであるとモーニングスターのクーは言います。「ESGは投資判断に役立つツール」であって、例えば「ESG企業」などという風に使われるものではないということです。
<9: ESGへの報復が始まる>
2021年のロシアのウクライナ侵攻は、「E」(環境)、「S」(社会)、「G」(ガバナンス)の各要素間の矛盾、一貫性の欠如、対立を際立たせたとモーニングスター・サステイナリティクスのサステナブル投資リサーチヘッドであるオルタンス・ビオイは指摘しました。例えば、欧州では、政府がロシアのガスへの依存を減らすために化石燃料に目を向け、環境目標を反故にしました。また、戦争によって石油やガスの株価が上昇し、化石燃料に依存しないESGファンドの方がアンダーパフォームしています。強力な防衛産業の必要性が強調され、「もはやサステナビリティを重視する投資家の価値観から逸脱しています」とビオイは言います。
一方、ファンドマネジャーが新規顧客を追い求めるにつれ、グリーンウォッシングに関する訴訟が増え、まさにその頃、サステナブル投資への批判も高まっていました。2023年、ドイツ銀行傘下の投資会社DWSは、ESG投資に関する虚偽表示をめぐりSECと和解しました。それとは別に、批評家は、パフォーマンスを過度に約束したり、政府によって気候変動解決への意欲が削がれていたりすることを理由にESGを非難しました。また、狭義の定義では「投資家の経済的利益」を侵しているとして、受託者責任に違反するとの見方もあります。クーは言います。「グリーンウォッシングは、主にファンドマネジャー側の行き過ぎというだけでなく、投資家側の非現実的な期待として捉えることができます」。
<10: 政争の具とされたESG>
2021年、テキサス州は、化石燃料や銃器産業を“罰している”と考えられている企業との政府契約を禁止し、公的年金基金にESG原則を用いた投資を禁止しました。また、共和党のESG反対派は、ESGを「ウォーク(目覚めた=意識高い系)資本主義」と揶揄して、企業が社会問題に踏み込むことを非難しました。2024年5月、フロリダ州では「気候変動」という用語が事実上州法から削除される法案に知事が署名しました。
デサンティスフロリダ州知事のXポスト(2024/5/16):ttps://x.com/GovRonDeSantis/status/1790820306157703505
今日では数十の州が、金融機関および他の大企業に関連するESG推進法案あるいは反ESG法案のいずれかを可決しています。この決定は財政にも影響を及ぼしました。ペンシルバニア大学によるオンライン・ビジネス・ジャーナルのWhartonは、「テキサス州の反ESG的な政策による地方債引受業者として特定の銀行を禁止するという決定によって、州内の都市が、合計で320億ドルの債券に対して追加で3億300万ドルから5億3200万ドルの利息を支払うことになる」と指摘しています。
「ESG」という用語が政治論争の的となるにつれ、企業や投資家は用語そのものを敬遠していきました。ブラックロックCEOのラリー・フィンク氏は、「ESGという用語は、右派と左派の両方で武器となり二極化しすぎているので、もう使うつもりはない」と述べています。
<11: ESGという用語は廃止されるべきか>
- 廃止賛成派の意見
元々は専門的な用語ですが「しばしば割安株投資、および企業価値に基づく投資の両方のアプローチを意味するようになり、それは、『受託者責任』を意図的に狭義で解釈する投資選択に対する、日和見的な政治的攻撃に拍車をかけました」とクックは述べています。グリーン・センチュリー・ファンド社長のレスリー・サムエルリッヒ氏は、「この用語は誤用されているので廃止するべきです。“ESG投資”なるものは存在しません。ESGデータを使用して投資先のリスクとリターンを評価しているだけです。それは単に自社のリスクに対処している企業への投資なのに、現実世界にインパクトを与える投資と混同されることがあまりにも多いのです」と付け加えます。
- ESGは必要という意見
企業において純粋に金融や経済的ではない要素の大部分は、ESGの観点から見ることができます。モーニングスター・サステイナリティクスのスチュワードシップ・リサーチ・ポリシー・ダイレクター、リンジー・スチュワートは、「その幅広さゆえに、ESGを加味した投資の支持者は受託者責任から目をそらしていると非難を受けかねないのです」と述べました。しかし、ESGに関する情報を考慮することは、事業が直面しているリスクと機会について360度の視野を得るために不可欠です。
- ESGデータや枠組みによって、投資家や企業は企業行動の実際のコストを把握できる
「企業に事業外の不利益やコスト(負の外部性)が発生すると、そのコストを負担するのは社会全体の責任になります。ESGデータは、企業行動の真のコストを示します。これまでそれを知る術のなかった人々が透明性を手にしました」とモーニングスターのガブリエル・プレスラーは述べています。
株主擁護団体アズ・ユー・ソーのCEOアンディ・ベハール氏は次のように述べています。「ESGとは、株主と(株主が保有する)企業が向き合う関係の構築です。株主が適切な決定を下せるように、正直に、そして標準化された形式で(ESG情報を)開示する必要があります」。数十年前にSECが標準化された財務情報の開示を要求したのと同様のことが、現在はESG情報に求められています。
- そして、今更後戻りはできない
投資リターンに重要な要素は、投資プロセスに立ち返って見つけることができます。中央銀行、規制当局、大規模な機関投資家を含む金融システムの参加者のほとんどは、投資における非財務的要因は財務と関連があると考えています。消費者は、それぞれが考えるサステナビリティ目標を支持する声を一層強めています。「ESGを完全にやめて以前のような投資に戻ることができると思いますか?単純なことではありません。ESG課題はすでに私たちの生活に浸透しています」とモーニングスター・サステイナリティクスのリサーチ・レーティング、ESGダイレクターのアダム・フレックは述べています。
<12: 今後20年の展望。2030年――気候変動に関する多数の目標達成期限が迫り来る>
- 世界的な規制と基準に期待
企業が気候リスク管理を測定し開示するために、スチュワートは、「半世紀前に一般に受け入れられた会計原則が誕生したのと同じように、サステナビリティのための原則が必要です。今日では、企業が収益や利益、あるいは資産と負債を開示するための標準化された方法がないという状況はまずあり得ません。近いうちに、我々は温室効果ガス排出量や労働力指標のようなESG開示についても、まさにその通りに感じるようになるでしょう」。
- インパクト重視の投資やその他のデータへの期待
「インパクトは、価値観を重視した投資の新しい形態です」とオルタンス・ビオイは言います。ESGに関するEUの新しい規制では、企業は自社の事業へのリスクと、自社が世界に与えるインパクトについて報告することが義務付けられています。このような規制の強化は「新しい傾向を促進します」。
- ファンドが具体的な期限を設定するよう期待
例えば、サステナブル・ファンドの約3分の2は、企業へのエンゲージメントの観点から、エネルギーセクターへの投資を行っています。「その見方を再考する時期が来ています」とヘイル氏は言います。「現在化石燃料に投資しているサステナブル・ファンドは、関与するのは5年後までと期限を示し、それ以降は化石燃料への投資から撤退する意向を表明すべきです。もう時間がありません」。
- 「S」(社会)要因は引き続き政治的論争の的に
「投資家は「S」(社会)関連の政策、慣行、投資手法を推進するための努力を継続するでしょう。しかし、人的資本管理やサプライチェーンの適応力(レジリエンス)などの一般的な用語で語られることがますます多くなるでしょう」とクックは言います。
- AIはサステナビリティ課題の収集や分析の方法を変革
世界はデータで溢れています。サステナビリティのリサーチは、企業が報告した情報を外部ソースによるその企業に関するデータで補完するもので、たとえばメタン排出に関する地理空間データなどです。「サステナブル投資が、多くの場合地球規模の複雑な問題を“解決”すると期待すべきではありませんが、変化を促す力にはなり得ます」とクーは述べています。
※ 本稿の筆者は、この記事に記載されている有価証券を所有していません。モーニングスターの編集ポリシーについてはこちらをご覧ください。
※ 本稿はMorningstarによる以下の記事をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。日本語版と原本に違いがある場合は元となる英語が優先されます。原本は以下からご覧いただけます。
ESG Turns 20: A Brief History, and Why It’s Not Going Away | Morningstar Indexes
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