2024年5月末 ランキングコラム
「JITRIランキング」2024年5月末
○ 今月はいつものランキングに加えて、以下の情報を追加しました。
― モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型指数)、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。
― NISAつみたて投資枠の対象として登録されている投資信託の運用実績。資産形成において投資信託への投資を活用しようという場合、一般的には検討すべき母集団はこれで充分ではないかと思います。
― 単位型投資信託について、純資産トップ50投信の運用実績。単位型は5月末時点で84本、純資産額合計は6390億円ですが上位20本で全体の純資産の81%、50本では98%を占めます。純資産1000億円以上の投信は2本、3位の投信の純資産は474億円ですから500億円以上と言っても2本ということになります。販売金融機関の欄は全社ではありませんが、大手証券や都銀のほか、地方銀行が中心になって販売しているものが多いことを見てほしかったからです。当初募集期間に金融機関からお客様に案内して販売する、というのが単位型投信の募集スタイルです。
― こちらも日本証券業協会の毎月の発表以外多くの人にとってはちょっと疎遠な、当局に届け出をして日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績。外国籍投信も個人投資家が「たまたま目にして購入する」ということはあまりなさそうで、金融機関による案内や、一度購入した投資家が関心を持って外国籍投信をフォローするようになる、といったケースが多いようです。とはいえ、比較的高い年齢層の特に富裕層では、いずれにせよ投資信託は「案内されて買うもの」という文化はまだ続いており、実際には国内籍の投信か外国籍の投信かなど強く意識していないお客様も多いようです(筆者の母も、かつて本人には中身がよくわからない外国籍投信―ブラジルレアルコースの外国債券投信を保有していました)。外国籍投信は5月末時点で650本ほどあり(国内純資産「0百万円」を含む)、合計純資産額は8兆9600億円もあります。純資産100億円以上の投信が107本、その合計純資産額は5兆2370億円ほどで全体の6割を占めます。大手証券を中心に富裕層ビジネスの一環として外国籍投信は引き続き一定の需要があるようです。
○ 新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが販売会社または投資家にあるのかがわかります。
5月の新ファンドは17本、当初設定額合計は560億円と、4月のトップファンドが770億円だったことと比較すると非常に地味に見えます。ほぼ「自己設定」(運用会社の自己資金による設定)のものが10本程度あるようで、残高が少ないことも頷けます。トップは三井住友DSアセットの「三井住友DS ワールド・ボンド・フォーカス2024-05(限定追加型)」で479億円でした。限定追加型というタイプの投信は、文字通り追加設定(ファンド運用開始以降の販売)を限定し、たとえば設定後数週間とか1か月程度のみ購入を受け付ける、といった仕組みの投信です。基本的には資金の出入りによって運用し辛くなる流動性の低い資産に投資をするものがこうした仕組みを採用します。この投信は「世界(日本を含む)の米ドル建ておよびユーロ建ての投資適格未満を含めた債券に投資し、信託財産の着実な成長と安定的なインカム収入の確保を目指す。投資適格の債券を中心に、原則として信託期間終了日前に満期を迎える債券に投資し、満期まで保有する「持ち切り」による運用を行う。原則として対円での為替ヘッジを行い、為替変動リスクの低減を図る。」とのことで、債券持ち切りの運用のため、限定追加型としているようです。
そのほか設定額は少ないのですが、5位にインドネシア株式投信、8位にインド株式のレバレッジ型投信、9位にインド株の銘柄集中投資型ETFと17本中3本が特定新興国にフォーカスしている投信で、これはなかなか尖ったラインアップではないでしょうか。
○ 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」では、12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。
今回から、「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」のうち、5年間、60カ月以上継続して毎月資金純増の投資信託を抜き出してランキングしています。5月末時点で105本ありましたが、ほとんどが◎印のパッシブ運用投信。また、○印のNISAつみたて投資枠対象投信や確定拠出型年金専用投信が多くを占めています。毎月決算型でランク入りしたものは3位の「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)《世界のベスト》」と三井住友トラスト「NWQフレキシブル・インカムファンド 為替ヘッジなし(毎月決算型)」の2本だけでした。
「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」では、前月9位だったHSBCの「HSBC インド・インフラ株式オープン」が4位に上昇し、前月と5位で変わらずの大和アセット「ダイワ・ダイナミック・インド株ファンド」の上につけました。ほかのインド株投信も若干の順位の上下はありますが、引き続き勢いがあります。
<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。米国株式、好配当株や高利回り(低格付)債券などを投資対象とするものが並ぶ中で、ここでもインド株やインド債券に投資を行う投信が散見され「分配金」選好の投資家にも人気があるようです。
<資産活用型>は4月から3本増加して46本、<資産形成型>は265本から大幅に増加して294本でした(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。
○ 外国籍投資信託の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関(外国投信において海外にある運用会社に代わって、届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)別の純資産額合計によるランキングも紹介しています。
(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えや感想です。Morningstar Japanとしての見解ではありません。)