2024年8月末 ランキング&コラム

「JITRIランキング」2024年8月末 

 

 

○ 今月のランキングは以下の内容です。(JITRIランキング_2024年8月末

 

 

― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型指数)、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。

 

 

― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の8月末時点でのリスクやリターンなど運用実績。資産形成のために投資信託への投資を活用しようという場合、一般的には検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しています。

 

 

― 5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。8月は株式市場の大きな変動を受け、前月の109本から大幅に減少し84本でした。このうちアクティブ投信は2本減少して13本になりました。このランキングに残っているアクティブファンドは、NISAつみたて投資枠の対象ファンドや、確定拠出年金など、そもそも「つみたて投資」で活用されているファンドが多いことがわかります。市場の変動に一喜一憂せず、資金動向が安定している「質のよいファンド」を運用会社、販売会社、投資家のそれぞれが長期投資、長期保有を念頭において育てていくことが大切です。

 

 

― 1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。

「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」では、トップに全世界株式、2位と4位に米国株式S&P500等のインデックス投信が並んでいます。3位、8位はインド株式に投資をするもの、6位、13位は半導体株式に投資をするものでした。市場のボラティリティが高まった8月でも、特定国や特定テーマへの投資意欲を保った投資家もいたようです。月初の下落でびっくりして売却してしまった投資家も若干あったようですが、比較的短期で株価が再浮上、その後も上下を繰り返す中で、遁走するような売却の大きな波となることは免れました。むしろ日本株パッシブ投信などでは、市場が下落すると買いに動く投資家が常々存在していますが、そのような買いが今回も見られました。いずれにせよ、短期での市場の変動に心を乱すことなく、不安になるのであれば自身のポートフォリオそのものや、資産全体に占める投資額の割合などを冷静に見つめなおして、投資を始めた所期の目的を思い出してください。

 

 

<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。こちらは好配当株などを中心にアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、資産活用型投信では相変わらず分配金の水準が投信を選ぶ基準となっているようです。

<資産活用型>は51本から49本に減少、<資産形成型>は314本から319本に増加しました(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。

 

 

― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は377本から1本減少して376本に、<資産活用型>は100本で変わらずでした。

純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、一度は5兆円を突破しましたが8月末には4兆9916億円でした。ファンド全体の中で1兆円を超えるファンドが9本、うち4本がパッシブ運用、5本がアクティブ運用のファンドです。

 

 

― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。

8月の新ファンドは27本、本数は前月より多くなりましたが、当初設定額の合計は575億から350億円に縮小しました。投信販売は新ファンド中心から定番ファンド推奨へと変化していますが、新ファンドはやはりトレンドを映す鏡です。

8月も債券型、株式型入り混じっての新規設定投でしたが、キーワードには「インカム」「利回り」「高/好配当」が一定数見受けられます。また、債券型のETFの品ぞろえとして米国債券のデュレーションが長い物や、アクティブETFと言える高配当株やキャッシュフローに注目した商品もありました。

 

 

― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は8月末時点で79本、純資産額合計は前月の7218億円から大幅に減少して6279億円でした。窓口販売では比較的丁寧に売られているようですが、設定以後は買えないのでメディアなどの話題にはのぼりにくい商品です。資金流出入を一定程度管理したいといった投資対象には適した仕組みなので、そうした「必然性」がある場合はこの仕組みを積極的に活用する商品が出てきてもよいと思います。

 

 

― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:多くの方にとってはちょっと疎遠な、当局に届け出をして日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。外国籍投信ということもあり、ファンド名は長いカタカナの商品も多く、たしかに商品の内容を示した名称ではあるものの、個人投資家には名称を覚えるのも一苦労といったものがほとんどです。そのため、銀行などで販売しているものの中には「愛称」を持つものもあるようですが、国内投信と違って、目論見書や月次報告書をインターネット上で見つけるのにも苦労する場合もあり、まだまだ身近な商品にはなりそうにありません。実際には円換算をして支払われる分配金額も、円建ての額がなかなかわからない、といった状況もあります。外国籍投資信託については、もっと共通のわかりやすい情報開示と、その情報へのアクセスのしやすさを目指して運用、販売を進めてほしいです。

 

 

― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関別の純資産額合計によるランキング(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)も紹介しています。外貨建てMMFは、コストを含めてもっと議論が進み、活用しやすいものになれば便利な商品になると思います。

 

 

(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えや感想です。Morningstar Japanとしての見解ではありません。)