2024年10月末 ランキング&コラム
「JITRIランキング」2024年10月末
○ 今月のランキングは以下の内容です。(※JITRIランキング_2024年10月末)
― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型指数)、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)の状況もあります。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。
― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の10月末時点でのリスクやリターンなど運用実績。資産形成のために投資信託への投資を活用しようという場合、一般的には検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しています。
― 「5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。9月の87本から1本だけ増加して88本でした。このうちアクティブ投信は1本増加して14本で変わらずです。ご注意いただきたいのは、モーニングスターではアロケーション型については各資産がパッシブ運用の場合でもアクティブに分類していることです。これは資産配分を決定するという能動的な判断が加味されているとうい観点からです。この14本の中にもそうしたアロケーション型のファンドがふくまれています。
一度資金純流出をしてしまうとこのランキングに戻るには最低でも5年かかりますから、ここに入るのは本当に大変なこと、コンスタントなロングセラー投資信託のリストとなります。
― 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。
<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。
トップ10は相変わらず米国株式市場を代表するS&P500種指数や世界の株式市場を代表する指数などに連動するインデックス運用(◎印)の投資信託と、インド株式や半導体株式、FANGなど地域・テーマを絞ったいわゆるテーマ株型の投信です。ただ、インド株への資金流入は若干減速しているようです。
インデックス運用の投信は、大きく分けると二つの正反対の利用者の投資目的があります。第一に、こちらが主流であると思いますが、つみたて投資やスポット買いで資産形成を図るバイ・アンド・ホールドタイプの人々。第二に、指数の動きを見ながらタイミングを計って短期で売買をする人々です。ただし、当ランキングにあるように継続的に資金が積みあがっているということは、つみたて投資やリピート購入で活用する方がファンドを育てているという証拠でしょう。
テーマ型投資については、その分かりやすさや射幸心に訴える魅力で購入する投資家層があることは確かです。そうした投資を個別に個人投資家が行おうとしても難しいため、投資信託は手軽に投資ができる便利な道具でもあり、こうしたファンドが生まれてくることも投信の面白さのひとつであると思います。一方で、投資する地域やテーマそのものの成長を考えると短期での投資が適しているというわけではなく、何年もかけて大きな成長が期待できる分野でもあります。ただ、テーマ型の投資は、ファンドそのものの問題ではなく、市場が過熱気味のときに資金が大きく流入する傾向があり、結果として投資家は高値で買ってしまうというケースが過去には多々見られました。その結果、市場に逆風が吹いたときに資金が大量に流出し、市場のリカバリーを獲得できずに小規模ファンドに転落したり、繰り上げ償還されてしまったりして、長期投資を実行するツールになれずに終わるファンドも多数ありました。投資家は、あらかじめファンドの運命を見定めることができない状況で、こうした投資とどう向き合うかも考えたうえで投資に取り組む姿勢が求められます。そして、ファンドを組成、販売する方々には投資テーマによる運用商品では、流行を作ることではなく、中長期で魅力的な投資対象を提供する姿勢を意識することをお願いしたいと思います。
<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。こちらはアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、資産活用型投信では相変わらず分配金の水準が投信を選ぶ基準となっているようです。とはいえひと昔前のように難解な仕組みで分配金額を上乗せするような商品は影を潜め、現在では好配当株などを中心に比較的スタンダードな投資対象と幅広い投資ユニバースからの銘柄選定の投資信託が多くなっています。
<資産活用型>は47本から42本に減少し減少傾向が続いています。<資産形成型>は323本から316本に減少しました(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。
― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は381本から388本に増加、5000億円以上のファンドも1本増加して26本でした。純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は10月28日に5兆7697億円となり、2008 年 8 月 8 日に「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」が達成した 5 兆 7685 億円の記録を塗り替え、さらに月末時点では5兆7906億円になりました。ただし、1ヵ月の資金純流入額では、2位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の方が167億円多くなっています。<資産活用型>は100本、5000億円以上のファンドは6本で、いずれも前月と変わらずでした。決算回数の多い投資信託ではいわゆる「売れ筋」のファンドがごく少数に絞り込まれているようですが、同時に市場動向によって商品がトレンドによって使い捨てになるのではなく、「定番」として分配率が多い商品のローテーションも意識されているようにも感じます。
― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。投信販売は新ファンド中心から定番ファンド推奨へと変化していますが、新ファンドはやはりトレンドを映す鏡です。
10月の新ファンドは35本、当初設定額の合計は9月の1378億円から793億円に減少しました。うちトップの「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(為替ヘッジなし)《電力革命》」が532億円を集めました。2位、3位、5位は限定追加型や単位型のバランス型や債券型投信で、同じコンセプトのファンドを繰り返し設定するスタイルです。4位は独立系運用会社のコモンズ投信が日本株インパクト投資をテーマに設定した「まあるい未来共創ファンドcotocoto」というファンドで、丸井系のカードと連携している販売会社を想起させるファンド名称です。
設定額は自己設定のため僅少ですが、「eMAXIS Slim 先進国株式(含む日本)<オール先進国>」は、人気のSlimシリーズに「日本を含む先進国」という新たな選択肢が加わりました。また、「SBI サウジアラビア株式上場投信《SBI・サウジ株・ETF》」「SBI-フランクリン・テンプルトン・インド株式インデックス・ファンド《SBI・フランクリン・インド株式》」(SBIアセット)や「野村インデックスファンド・日経半導体株《Funds-i 日経半導体株》」(野村アセット)、「インデックスファンドNifty50(インド株式)」(日興アセット)、「ニッセイ・インデックス・SOX(米国半導体株)」(ニッセイアセット)など、テーマ型・地域集中型投資においてパッシブ運用による低コスト化の潮流も進んでいます。
― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は10月末時点で78本、うち純資産50億円以上のものは29本、全体の純資産額合計額は前月の7496億円から6339億円に減少しました。
― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。日本小j兼業協会が開示している国内販売されている外国籍投信のうち、純資産の表示がゼロではないものは10月末時点で572本、国内純資産額は6兆3732億円でした。500億円以上のファンドが23本、50億円未満のファンドが414本です。海外で同じファンドへの投資があり実際の運用額が多い場合は問題はないのですが、日本で販売するためのシェアクラスをわざわざ設定しており、その残高の少ないものもあり、管理費用や開示にかかるコスト等を考えると、投資家にとって合理的な投資対象として長く運用できているのか疑問のあるケースもあります。国内投信と違って、目論見書や月次報告書をインターネット上で見つけるのにも苦労する場合もあり、投資初心者にとって身近な商品とは言えないかもしれません。実際には円換算をして支払われる分配金額も公開された開示はない、といった状況もあります。外国籍投資信託については、もっと共通のわかりやすい情報開示と、その情報へのアクセスのしやすさを目指して運用、販売を進めてほしいです。
― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関別の純資産額合計によるランキング(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)も紹介しています。外貨建てMMFは、コストを含めてもっと議論が進み、活用しやすいものになれば便利な商品になると思います。
(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えや感想です。Morningstar Japanとしての見解ではありません。)