2024 12月末 ランキング&コラム
○ 今月のランキングは以下の内容です。(※ランキングデータはこちらをご覧ください)
― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型指数)、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)の状況もあります。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。
― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の11月末時点でのリスクやリターンなど運用実績。資産形成のために投資信託への投資を活用しようという場合、特別に投資方針や投資対象の選別に強いこだわりがある方や支持する投資信託があるという方でなければ、検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しています。12月末時点でつみたて投資枠対象ファンドの純資産は約34兆4365億円、追加型投信全体(ETFを除く)の約24%を占めています。そのすべてが積立投資による資金ではありませんが、追加型投信のほぼ4分の1を300本に満たない投信が占めていることは特筆に値します。また、12月の資金増減(その月の設定額から解約額を差し引いた投資資金の純増減)でみると、つみたて投資枠投信合計で6240億円、それ以外が2470億円と、資金の流入でもこれらの投資信託は着実な成長を見せています。
― 「5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。本数は前月から4本増加して92本でした。このうちアクティブ投信は14本で変わらずです。ご注意いただきたいのは、モーニングスターではアロケーション型については各資産がパッシブ運用の場合でもアクティブに分類していることです。これは資産配分を決定するという能動的な判断が加味されているとうい観点からです。この14本の中にもそうしたアロケーション型のファンドがふくまれています。88本のうち60本がNISAつみたて投資枠対象ファンドで、これも前月から2本増加しています。
一度資金純流出をしてしまうとこのランキングに戻るには最低でも5年かかりますから、ここに入るのは本当に大変なことで、コンスタントなロングセラー投資信託のリストとなっています。
― 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。
<資産形成型>と分類したのは決算回数が年1回、2回のもの。
トップ10は相変わらずほとんどが米国株式市場を代表するS&P500種指数や世界の株式市場を代表する指数などに連動するインデックス運用(◎印)の投資信託で、少し尖ったインデックス投信としてNEXT FANG+の投信が11月の8位から6位に順位を上げ、NASDAQ100の投信も10位から8位に上昇しています。消費関連インド株式やロボティクス株式などテーマ株型の投信も11位から20位の中に見られます。
インデックス運用の投信は、大きく分けると二つの正反対の利用者の投資目的があります。第一に、こちらが主流であると思いますが、つみたて投資やスポット買いで資産形成を図るバイ・アンド・ホールドタイプの人々。第二に、指数の動きを見ながらタイミングを見計らって短期で売買をする人々です。ただし、当ランキングにあるように継続的に資金が積みあがっているということは、つみたて投資やリピート購入で活用する方がファンドを育てているという証拠でしょう。
テーマ型投資や地域集中投資は、その分かりやすさや射幸心に訴える魅力で購入する投資家層があることは確かです。そうした投資を個別に個人投資家が行おうとしても難しいため、投資信託は手軽に投資ができる便利な道具でもあり、こうしたファンドが生まれてくることも投信の面白さのひとつであると思います。一方で、投資する地域やテーマそのものの成長を考えると短期での投資が適しているというわけではなく、何年もかけて大きな成長が期待できる分野でもあります。ところが、テーマ型の投資は、ファンドそのものの問題ではなく、市場が過熱気味のときに資金が大きく流入する傾向があり、結果として投資家は高値で買ってしまうというケースが過去には多々見られました。その結果、市場に逆風が吹いたときに資金が大量に流出し、市場のリカバリーを獲得できずに小規模ファンドに転落したり、繰り上げ償還されてしまったりして、長期投資を実行するツールになれずに終わるファンドも多数ありました。投資家は、あらかじめファンドの運命を見定めることができない状況で、こうした投資とどう向き合うかも考えたうえで投資に取り組む必要があります。また、ファンドを組成、販売する方々には投資テーマによる運用商品では、流行を作ることではなく、中長期で魅力的な投資対象を提供する姿勢を意識することをお願いしたいと思います。
<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。こちらはアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、投資対象もほとんどが株式で、相変わらず分配金の水準が投信を選ぶ基準となっているようです。とはいえひと昔前のように難解な仕組みで分配金額を上乗せするような商品は影を潜め、現在では好配当株などを中心に比較的スタンダードな投資対象と幅広い投資ユニバースからの銘柄選定の投資信託が多くなっています。
<資産活用型>は39本から45本に久々に大きく増加して、減少傾向がストップしました。<資産形成型>も311本から317本に増加しました(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。
― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は389本から407本に増加、5000億円以上のファンドは3本増加して28本になりました。純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は月末時点で6.5兆円を超えました。1ヵ月の資金純流入額でも12月は、2位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」より若干多くトップとなっています。決算回数の多い<資産活用型>投資信託ではいわゆる「売れ筋」のファンドがごく少数に絞り込まれているようで、5000億円以上のファンドは6本です。ただしかつてのように商品がトレンド次第で使い捨てになるのではなく、「定番」として市場動向を睨みながら分配率が多い商品のローテーションが意識されているようにも感じます。依然としてリタイアメント世代には定期的な分配を望むニーズがあります。コストや税金のロス、源資産の価格変動を理解した上で活用するならば、それは商品のひとつの利便性の形ではあると思います。
― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。投信販売は新ファンド中心から定番ファンド推奨へと変化していますが、新ファンドはやはりトレンドを映す鏡です。
12月の新ファンドは27本、当初設定額の合計は11月の256億円から大幅に増加して910億円でした。トップの「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)《S・米国高配当株式100》」(SBIアセット)は、1本で596億円を集めました。2位の「アメリカ国家戦略関連株ファンド」(SBI岡三アセット)が84億円、3位のシリーズものの単位型投信「One円建て債券ファンドIII 2024-12《円結びIII 2024-12》」(アセットマネジメントOne)が75億円でした。
今月はインド株関連ファンドが5本も新設されました。SBI岡三アセットの「インド・イノベーション・フォーカスファンド」、HSBCの「HSBCインド小型株式オープン」と「HSBC インドテック株式インデックスファンド」、ニッセイアセットの「ニッセイ・インド中小型株式ファンド」、大和アセットの「一歩先いく 華麗なるインド・トップ10+インデックス」と、いずれも従来のインド株ファンドよりも投資対象やテーマを絞ったタイプのものです。さらに今月は「One ETF FTSE・サウジアラビア・インデックス」(アセットマネジメントOne)という、サウジアラビア株式に投資をするETFも登場しました。久々に挑戦的なファンドが並び、こうしたファンドがどのような成長を見せてくれるかは(皮肉ではありません!)、ボラティリティは大きくても、長期で期待できる市場やテーマなので風雨を超えて成長してほしいと思います。
― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は12月末時点で75本、うち純資産50億円以上のものは11月から1本増加して30本、全体の純資産額合計額は前月の6265億円から6275億円にわずかに増加しました。
― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。日本証券業協会が開示している国内販売されている外国籍投信のうち、MMFと純資産の表示がゼロでものを除くと、12月末時点で566本、国内純資産額は6兆6405億円でした。500億円以上のファンドが前月より1本増加して24本、50億円未満のファンドが407本です。大型のファンドもあるものの、かなりのファンドが国内純資産額が少なくなっているものであることが分かります。海外で同じファンドへの投資があり、実際の運用額が多い場合は問題はないのですが、日本で販売するためのシェアクラスをわざわざ設定して、その残高が極端に少ないものもあり、管理費用や開示にかかるコスト等を考えると、投資家にとって合理的な投資対象として長く運用できるのか疑問のあるケースも目につきます。国内投信と違って、目論見書や月次報告書をインターネット上で見つけるのにも苦労する場合もあり、投資初心者にとって身近な商品とは言えないかもしれません。実際には円換算をして支払われる分配金額も円建ての分配金額が公開されていないファンドがほとんど、といった状況もあります。外国籍投資信託については、もっと共通のわかりやすい情報開示と、その情報へのアクセスのしやすさ、外国籍投信であることが投資家にとってメリットとなる商品を目指して組成、運用、販売を進めてほしいです。
― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関別の純資産額合計によるランキング(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)も紹介しています。外貨建てMMFは、コストを含めてもっと議論が進み、活用しやすいものになれば投資家にとっても便利な商品になると思います。
(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えや感想です。Morningstar Japanとしての見解ではありません。)