2025年 2月末 ランキング&コラム

○ 今月のランキングは以下の内容です。(ランキングデータはこちらをご覧ください

 

― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型)指数、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)の状況もあります。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。

 

 

― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の2月末時点でのリスクやリターンなど運用実績を掲載しています。

資産形成のために投資信託への投資を活用しようという場合、投資方針や投資対象の選別に特別に強いこだわりがある方や支持する投資信託があるという方でなければ、検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しています。

 

 

2月末時点でつみたて投資枠対象ファンドの純資産(ETFを除く)は約35兆2198億円、追加型投信全体の約23%を占めています。そのすべてが積立投資による資金ではありませんが、追加型投信のほぼ4分の1の資産を300本ほどの投信が占めていることは特筆に値します。また、2月の資金増減(その月の設定額から解約額を差し引いた投資資金の純増減)でみると、つみたて投資枠投信(除くETF)合計で8046億円、それ以外が8240億円と、資金の流入でもわずか300本ほどの投信が純流入全体の約半分を占めており、つみたて投資枠に登録された投資信託は着実な成長を見せています。

 

 

しかし、純資産が10億円未満の投資信託も60本ありますから、商品の効率性や持続可能性については注意が必要でしょう。「ファンドのスタートが小さくても、時間をかけて大きく育てる」という運用会社の志も重要であり、資金がコツコツと純流入を続ければその通りに育つ見込みもあります。とはいえ、低コストのつみたて投資枠用ファンドでも一定の採算見込みを持って設定しなければ、つみたて投資枠のファンドが負うはずのコストを、他のファンドからの収益によって埋め合わせる状態が続くことになり、投資家間で公平・公正な手数料体系という観点からは不健全な構造が定着することになります。低コストインデックス投信、つみたて投資枠登録ファンドといえども、他の人々にコストをシワ寄せしてフリーライダーを許容するのではなく、健全な仕組みを追求していくことが持続可能な制度にとって肝要ではないでしょうか。

 

 

― 5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。本数は前月から7本も増加してついに100本になりました。このうちアクティブ投信は15本で1本増えました。ご注意いただきたいのは、モーニングスターではアロケーション型については各資産がパッシブ運用の場合でもアクティブに分類していることです。この分類は資産配分を決定するという「能動的」な判断が加味されているという観点から行われていますす。この15本の中にもそうしたアロケーション型のファンドがふくまれています。100本のうち〇のついている63本がNISAつみたて投資枠の対象ファンドです。

一度資金純流出をしてしまうとこのランキングに戻るには最低でも5年かかりますから、ここに入るのは本当に大変なことで、コンスタントなロングセラー投資信託のリストとなっています。

 

 

― 1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。

 

 

<資産形成型>は決算回数が年1回、2回のもの。

トップ10のうち9位までが外国株式に投資をするもの。米国株式市場を代表するS&P500種指数や世界の株式市場を代表する指数などに連動するインデックス運用(◎印)の投資信託が8本を占め、3位にアクティブ運用の米国株式投信が1本だけ入っています。10位にはバランス型がランクインしています。少し尖ったインデックス投信としてNEXT FANG+は5位を維持、NASDAQ100は8位から12位になりました。国内株式の投信は最高でも17位、ロボティクスの投信は15位を維持しました。一方インド株式の投信は資産形成型のランキングに6本入っているものの、最高でも50位となり、潮目の変化がみられます。

 

 

テーマ型、セクター型の投資や地域集中の特化型投資は、その分かりやすさや射幸心に訴えるストーリーの魅力で購入する投資家層があることは確かです。そうした投資を個別に個人投資家が行おうとしても難しいため、投資信託は手軽に投資ができる便利な道具でもあり、こうしたファンドが生まれてくることも投信の面白さのひとつであると思います。一方で、投資する地域やテーマそのものの成長を考えると、こうした投資であっても短期投資が適しているというわけではなく、何年もかけて大きな成長が期待できる分野でもあります。ところが、テーマ型などの投資は、ファンドそのものの問題ではなく、市場が過熱気味のときに新規設定されたり、資金が大きく流入したりする傾向があり、結果として投資家は高値で買ってしまうというケースが過去には多々見られました。その結果、市場に逆風が吹いたときに資金が大量に流出し、市場のリカバリーを獲得できずに小規模ファンドに転落して繰り上げ償還されてしまうなど、長期投資を実行するツールになれずに終わるファンドも多数ありました。投資家は、あらかじめファンドの運命を見定めることができない状況で、こうした投資とどう向き合うかも考えたうえで投資に取り組む必要があります。また、ファンドを組成、販売する方々には投資テーマによる運用商品では、流行を作ることではなく、中長期で魅力的な投資を提供する姿勢を意識することをお願いしたいと思います。

 

 

<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。

こちらはアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、投資対象もほとんどが株式で、ここでは5位にインド株式の投信が入っています。ひと昔前のように難解な仕組みで分配金額を上乗せするような商品は上位からは影を潜め、現在では好配当株などを中心に比較的スタンダードな投資対象と幅広い投資ユニバースからの銘柄選定の投資信託が多くなっています。

<資産活用型>は前月の48本から49本に1本増加、<資産形成型>も341本から343本に増加しました(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。

 

 

― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は410本から399本に減少、5000億円以上のファンドは前月から1本減少して27本でした。純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は月末時点で純資産は6.6兆円、2月の純流入額は1860億円ありましたが、株式市場の影響で前月より純資産は減少しました。2位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が5.3兆円、純流入額は1800億円とS&P500と並ぶ勢いです。

決算回数の多い<資産活用型>では5000億円以上のファンドは6本で変わらず。投資信託ではいわゆる「売れ筋」のファンドがごく少数に絞り込まれているようですが、外国株式が圧倒的に優勢な他のランキングに比べて、米国REITや高利回り(低格付け)債券、リスクコントロール型のアロケーション投信など、投資対象に多様性がみられます。ただしかつてのように商品がトレンド次第で使い捨てになるのではなく、「定番」として市場動向を睨みながら分配率が多い商品のローテーションが対面販売で意識されているようにも感じます。依然としてリタイアメント世代には定期的な分配を望むニーズがあります。コストや税金のロス、投資対象資産の価格変動や分配金の由来を理解した上で活用するならば、それは商品のひとつの利便性の形であると思います。

 

 

― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。投信販売は新ファンド中心から定番ファンド推奨へと変化していますが、新ファンドはやはりトレンドを映す鏡です。

2月の新ファンドは30本、当初設定額の合計は前月の590億円から大きく増加して1082億円でした。

トップの「野村マッコーリー・プライベート・インフラ・ファンド」(野村アセット)は、野村證券のみの販売で当初設定時点で851億円を集めました。先進国を中心とした世界各国の非上場インフラ企業の株式に実質的に投資を行うもので、最近のドリームワード「非上場」の効果は絶大なようです。2位の「HSBCグローバル・ターゲット利回り債券ファンド2025-02(限定追加)《グロタ》」(HSBC)は限定追加型で99億円、3位、7位、8位の「東海東京ヌビーン・リタイアメントファンド」(お金のデザイン)は3本シリーズもので、リタイアメント後の「資産寿命を延ばしながら使う」コンセプトを掲げたファンドで、3本で48億円でした。

今月は「ニッセイ・インド株式ファンド<購入・換金手数料なし>」でインド株式の低コストファンドが登場、実質0.3%程度の運用コストでインド株に投資できるようです。ほかに、インド国債、ベトナム成長株、水関連、電力関連、サイバーセキュリティなど、変わらずテーマ特化型の新ファンドが誕生しています。

いずれの切り口も中長期でみれば伸びしろは大きいはずなので、あまり短期ではなく、せっかく設定したのですから気長に大きく育ってくれればいいと思います。

 

 

― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は2月末時点で70本、うち純資産50億円以上のものは30本で変わらずでした。、全体の純資産額合計額は前月の6215億円から6111億円に減少しました。

 

 

― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。日本証券業協会が開示している国内販売されている外国籍投信のうち、MMFと純資産の表示がゼロでものを除くと、2月末時点で568本、国内純資産額は6兆6351億円でした。500億円以上のファンドは25本で前月と変わらずです。

国内投信と違って、目論見書や月次報告書をインターネット上で見つけるのにも苦労する場合もあり、外国籍投信は投資初心者にとって身近な商品とは言えないかもしれません。円建ての分配金額が公開されていないファンドがほとんど、といった状況もあり、円建てでの運用状況の把握が困難というデメリットもあります。外国籍投資信託については、もっと共通のわかりやすい情報開示と、その情報へのアクセスのしやすさ、外国籍投信であることが投資家にとってどんなメリットがあるのかを明確に示す商品を目指して組成、運用、販売を進めてほしいです。

 

 

― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関別の純資産額合計によるランキング(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)も紹介しています。外貨建てMMFは、コストを含めてもっと議論が進み、活用しやすいものになれば投資家にとっても便利な商品になると思います。

 

 

(文責・島田 知保:本稿は筆者個人の考えやコメントです。モーニングスター・ジャパンとしての見解ではありません。)