2025年4月末 ランキング&コラム
「JITRIランキング」2025年4月末
※ 都合により3月末時点の掲載期間が短かったのでお問い合わせがございましたら、[email protected],jp宛にてお知らせください。
○ 今月のランキングは以下の内容です。(※ランキングデータはこちらをご覧ください)
― 「世界のマーケット」:様々な資産の運用実績のベンチマークとしてご参考ください。モーニングスター・インデックスを用いた代表的な市場や資産複合型(バランス型)指数、各国為替などの実績。主要資産クラスのほか、各国市場、ESGほか投資ストラテジー(サステナビリティ指数のほかジェンダー、低カーボン等、またモーニングスターのワイドモート・フォーカス指数など)の状況もあります。※騰落率は年率換算していないことにご注意ください。
― NISAつみたて投資枠対象ファンドの運用実績:NISAつみたて投資枠の対象として登録されている全投資信託の4月末時点でのリスクやリターンなど運用実績を掲載しています。
資産形成のために投資信託への投資を活用しようという場合、運用手法や投資対象(投資地域や業種・セクターなど)の選別に特別に強いこだわりがある方や、これだ!と支持する投資信託があるという方でなければ、検討すべきファンドの母集団はこれで充分ではないかと思います。投資初心者やコア資産としての運用をお考えの方の参考になればと思って掲載しています。
4月末時点でつみたて投資枠対象ファンドの純資産(ETFを除く)は約34兆3179億円、追加型投信(ETFを除く)全体の約26%を占めています。そのすべてが積立投資による資金ではありませんが、追加型投信の4分の1以上の資産を300本ほどの投信が占めていることは特筆に値します。また、4月の資金増減(その月の設定額から解約額を差し引いた投資資金の純増減)でみると、つみたて投資枠投信(除くETF)合計では前月の8164億円からやや減少しましたが7868億円の純流入でした。つみたて投資枠以外の投信が前月の8482億円から4805億円と激減したことに比べると、つみたて投資枠対象投信への資金流入は順調と言えるでしょう。資金の流入でもわずか300本ほどの投信が純流入全体の62%を占めており、つみたて投資枠に登録された投資信託は着実な成長を見せています。
そうは言っても、純資産が10億円未満の投資信託も64本ありますから、商品の効率性や持続可能性についてはつみたて投資枠対象の投信でも注意が必要でしょう。「ファンドのスタートが小さくても、時間をかけて大きく育てる」という運用会社の志も重要であり、資金がコツコツと純流入を続ければその通りに育つ見込みもあります。とはいえ、低コストのつみたて投資枠用ファンドでも一定の採算見込みを持って設定しなければ、つみたて投資枠のファンドが負うはずのコストを、他のファンドからの収益によって埋め合わせる状態が続くことになり、投資家間で公平・公正な手数料体系という観点からは不健全な構造が定着することになります。低コストインデックス投信、つみたて投資枠登録ファンドといえども、他の人々にコストをシワ寄せしてフリーライダーを許容するのではなく、健全な仕組みを追求していくことが持続可能な制度にとって肝要ではないでしょうか。また、せっかく積立投資枠で長くつきあうつもりの投資信託が、繰上償還となってしまったり、長期にわたって小規模のまま諸費用のコストが知らないうちに割高に放置されてしまったりするなど、投資家にとって好ましくない事態が起きないような仕組みが必要かもしれません。そのためには、登録時だけではなく、登録されたファンドが条件を満たしているか、満たしていない場合には改善の努力がされているか、などを定期的に点検する仕組みがあると良いのではないでしょうか。
― 「5年間継続して資金純増の人気ファンド」:60カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。本数は前月と変わらず105本でした。このうちアクティブ投信は前月から2本減って13本になりました。ご注意いただきたいのは、モーニングスターではアロケーション型については各資産がパッシブ運用の場合でもアクティブに分類していることです。この分類は資産配分を決定するという「能動的」な判断が加味されているという観点から行われていますす。この13本の中にもそうしたアロケーション型のファンドがふくまれています。105本のうち〇のついている63本がNISAつみたて投資枠の対象ファンドで、前月から1本増加しました。
一度資金純流出をしてしまうとこのランキングに戻るには最低でも5年かかりますから、ここに入るのは本当に大変なことで、コンスタントなロングセラー投資信託であり繰上償還リスクが低い投資信託のリストとなっています。
― 「1年間継続して資金純増であった人気ファンド」:12カ月以上続けて毎月の資金流入が流出より多かったファンドを1年の純流入額合計でランキングしています。○のマークはNISAつみたて投資枠対象、◎は指数連動型(インデックス運用)のファンドです。
<資産形成型>は決算回数が年1回、2回のもの。
トップ10のうち上位9本はすべて外国株式に投資をするもので、10位には前回14位だった実質的に金に投資をする投信がランク入りしました。市場の先行きが不透明な状況で、金への投資に投資家の関心が向かったようです。トップ10のうち8本がインデックス運用で、その内訳は米国株式市場を代表するS&P500種指数に連動を目指すものが4本、世界の株式市場を代表する指数などに連動するインデックス運用(◎印)のものが3本、その他超大型銘柄中心の集中投資型インデックス運用のファンドが1本でした。アックティブ運用のものは2本で、3位に米国の成長株式投信と、先に挙げた10位の金関連投信です。国内株式の投信は最高でも19位、テーマ型のロボティクスの投信は16位変わらずでした。
テーマ型、セクター型の投資や地域集中の特化型投資は、その分かりやすさや射幸心に訴えるストーリーの魅力で購入する投資家層があることは確かです。そうした投資を個別に個人投資家が行おうとしても難しいため、投資信託は手軽に自分の嗜好に遭った投資ができる便利な道具でもあり、こうしたファンドが生まれてくることも投信の面白さのひとつであると思います。投資する地域やテーマそのものの成長を考えると、こうした投資であっても短期投資が適しているというわけではなく、何年もかけて大きな成長が期待できる分野でもあります。ところが、テーマ型などの投資は、ファンドそのものの問題ではなく、市場が過熱気味のとき(実際にその分野への関心が高まって価格が上昇しているとき)に新規設定されたり、資金が大きく流入したりする傾向があり、結果として投資家は高値で買ってしまうというケースが過去には多々見られました。その結果、市場に逆風が吹いたときに資金が大量に流出し、市場のリカバリーを獲得できずに小規模ファンドに転落して繰上償還されてしまうなど、長期投資を実行するツールになれずに終わるファンドも多数ありました。投資家は、あらかじめファンドの運命を見定めることができない状況で、こうした投資とどう向き合うかも考えたうえで投資に取り組む必要があります。また、ファンドを組成、販売する方々には投資テーマによる運用商品では、流行を作ることではなく、中長期で魅力的な資産の成長機会を提供する姿勢を意識することをお願いしたいと思います。
<資産活用型>は年4回以上決算のあるものです。
こちらはアクティブ運用の投信が圧倒的に多く、投資対象もほとんどが株式で、インド株式の投信は先月の5位から7位になりました。ひと昔前のように難解な仕組みで分配金額を上乗せするような商品は上位からは影を潜め、現在では好配当株や成長株などを中心に比較的スタンダードな投資対象と幅広い投資ユニバースからの銘柄選定の投資信託が多くなっています。
<資産活用型>は前月の53本から52本になり、<資産形成型>は347本から329本に減少しました(※いずれも月末純資産額50億円以上のファンドが対象)。近年ファンドの償還の増加や新規設定の減少、NISA成長投資枠に入らないことも一因で整理が進んできた資産形成型投信の中心的存在である毎月決算型ですが、今後いわゆる「プラチナNISA」等の議論の中で風向きが変化するのか注目したいと思います。
― 純資産500億円以上の人気ファンドランキング:<資産形成型>は399本から392本に減り、5000億円以上のファンドは前月と同じ25本でした。純資産額トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は月末時点で純資産は前月末の6.47兆円から6.33兆円に減少、純流入額は3月の1782億円とほぼ同水準の1726億円でした。2位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は純資産はほぼ横ばいの5.4兆円、純流入額は1868億円から微増の1889億円とほぼ同水準でした。
決算回数の多い<資産活用型>は前月の100本から1本減って99本、5000億円以上のファンドは6本で変わらずでした。投資信託ではいわゆる「売れ筋」のファンドがごく少数に絞り込まれているようですが、外国株式、米国株式が圧倒的に優勢な他のランキングに比べて、米国REITや高利回り(低格付け)債券、アロケーション型投信など、投資対象に多様性がみられます。ただしかつてのように商品が流行を追って使い捨てになるのではなく、「定番」として市場動向を睨みながら分配率が相対的に高い商品のローテーションが対面販売で意識されているようにも感じます。依然としてリタイアメント世代には定期的な分配を望むニーズがあります。コストや税金のロス、投資対象資産の価格変動や分配金の由来を理解した上で活用するならば、それは商品のひとつの利便性の形であると思います。
― 「新規設定投信 設定額ランキング」:新ファンドの設定額ランキングでは今どんな投資対象に対するニーズが投資家または販売会社にあるのかがわかります。投信販売は新ファンド中心から定番ファンド推奨へと変化していますが、新ファンドはやはりトレンドを映す鏡です。
4月の新ファンドは17本、当初設定額の合計は前月447億円から更に減少して153億円でした。
トップの「フィデリティ・欧州割安成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)」(フィデリティ投信)はSMBC日興証券が販売し、当初設定時点で96億円を集めました。同ファンドの「Aコース(為替ヘッジあり)」は0.7億円で8位でした。2位の「あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2025-04」(あおぞら投信)は限定追加型で30億円、複数の地銀などが販売しています。3位の「JPM日本株式ハイ・インカム・ファンド(毎月決算型)」(JPモルガンAM)は18億円、毎月決算型。同ファンドの「年1回決算型」は0.7億円で7位、「隔月決算型」と「3ヵ月決算型」は0.01億円で11位でした。ほかに東京海上アセットのNISAつみたて投資枠の登録ファンドである既存ターゲット・イヤー・ファンドのシリーズに4本が追加されました。
― 「単位型投資信託 純資産Top50の運用実績」:単位型は3月末時点で67本、うち純資産50億円以上のものは1本増加して30本、純資産の合計は5462億円でした。全体の純資産額合計額は6088億円なので、純資産の約90%を上位30本の投資信託が占めています。
― 「外国籍投信(国内販売、純資産100億円以上)の運用実績」:日本で販売されている外国籍の投資信託のうち国内純資産が100億円以上ある投信の運用実績です。日本証券業協会が開示している国内販売されている外国籍投信のうち、MMFと純資産の表示がゼロでものを除くと、4月末時点で553本、国内純資産額は6兆3661億円でした。500億円以上のファンドは25本で前月と変わらずです。
国内投信と違って、目論見書や月次報告書をインターネット上で見つけるのにも苦労する場合もあり、外国籍投信は投資初心者にとって身近な商品とは言えないかもしれません。円建ての分配金額が公開されていないファンドがほとんど、といった状況もあり、円建てでの運用状況の把握が困難というデメリットもあります。外国籍投資信託については、もっと共通のわかりやすい情報開示と、その情報へのアクセスのしやすさ、外国籍投信であることが投資家にとってどんなメリットがあるのかを明確に示す商品を目指して組成、運用、販売を進めてほしいです。
― 外国籍投信の周辺情報として、外貨建てマネー・マーケット・ファンドの純資産ランキングと、代行金融機関別の純資産額合計によるランキング(外国投信において海外にある運用会社に代わって、日本で届け出や情報開示などを行う金融機関。多くの場合、その投資信託を販売する金融機関か海外の運用会社の日本法人)も紹介しています。外貨建てMMFは、コストを含めてもっと議論が進み、活用しやすいものになれば投資家にとっても便利な商品になると思います。